(改訂)2024年春の新潟研究集会のご案内

「新潟からエネルギー問題を考える」

今年の正月に発生した能登半島地震は、今更ながら、地震の怖さをまざまざと見せつけられました。それと同時に、日本には地震に関して安全といえるような場所はないことを我々に知らしめたと思います。福島原発事故から13年、ドイツは確実に脱原発への道を歩もうとしているのに、わが国は、温暖化対策にこじつけて原発の再稼働を推し進め、運転期間の延長や新型炉の開発などにより、原発回帰策を推進しようとしています。

今回は新潟からエネルギー問題と現代の課題について、これからどのような将来展望を切り開いていくかを皆さんと共に討論したいと思います。

 

【日 時】 2024年5月18日(土)19日(日)

【会 場】 新潟大学 駅南キャンパスときめいと(新潟駅南口より徒歩3分 プラーカ1 2階)

https://www.niigata-u.ac.jp/university/facility/tokimate/

【参加費】 無料

【申し込み先】

https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSf76ZyI8DBKLjxXqPB2LvkhblDERjiOQSMEi6TxoLv2_YZuyQ/viewform?vc=0&c=0&w=1&flr=0&usp=mail_form_link

※お申し込みがなくとも当日参加受付をいたしますが、円滑な運営の為にも、事前のご登録にご協力ください
【参加 Zoom ミーティング】

https://us02web.zoom.us/j/87365342214?pwd=cUNxcmNVZmt2dytQN0FhcnQ0ekZSQT09

ミーティング ID: 873 6534 2214  パスコード: 911686       (二日間とも同じ)

 

【プログラム】

◎5月18日(土)

13時―17時    一般講演

17時半―      懇親会(会場近くを予定)

◎5月19日(日)

9時50分     開会挨拶  (学会代表世話人)

10時―12時25分   全体講演

講演Ⅰ 「新潟から原発問題を問いかけるー福島事故の検証と「検証総括報告書」を踏まえてー」

池内了さん(総合研究大学院大学・名古屋大学名誉教授、宇宙物理学、理学博士 元新潟県原子力発電所事故に関する検証総括委員会委員長)

講演Ⅱ 「原子力防災の虚構~能登半島地震から改めて考える」

上岡直見さん(環境経済研究所(技術士事務所)・会員)

13時30分―15時30分   パネルディスカッション 参加者との質疑討論

15時30分    閉会挨拶  (学会代表世話人)

 

【問合せ先】   学会事務局(office-k@entropy.ac) 075-708-8062

藤堂史明(toudou@econ.niigata-u.ac.jp

福本敬夫(totomukuf2@cb4.so-net.ne.jp) まで

 

《全体講演》

「新潟から原発問題を問いかけるー福島事故の検証と「検証総括報告書」を踏まえてー」  池内了さん

2018年に、当時の新潟県知事の米山氏より、「新潟県原子力発電所事故に関する検証総括委員会」の委員長を依頼された。しかしながら、後任の花角知事との委員会運営上の対立が生じ、約5年間に2回しか委員会開催ができないまま、2023年3月31日を以って解任された。その対立の根源は「地方自治」についての考え方の相違にあり、地方はひたすら中央集権体制に従順に振舞うか、「自分のことは自分で決める」との自治の政治を選ぶか、の選択の問題であったと言える。「国策民営」の原発はひたすら前者の道を歩んで福島事故を引き起こした。それについてまとめた「検証総括報告書」の中身を併せて紹介する。

「原子力防災の虚構~能登半島地震から改めて考える」    上岡直見さん

私は新潟県の避難検証委員会に参加するなど原子力防災を検討してきたが、能登半島地震での家屋倒壊、道路寸断などその問題が現実化した。原子力規制庁はみずから「避難も屋内退避もできない場合」の被ばく量推定を行っており、IAEA, ICRPなど被ばくの影響に楽観的とされる基準さえ上回る被ばく量を推定しているが、規制庁・規制委員会は防護措置の見直しを否定している。今回は新潟開催の条件もあり、柏崎刈羽地域の固有の条件も加えた検討を報告する。

 

《一般講演》

「代替エネルギーよりもエネルギー消費縮小」   近藤恭彦さん (会場口頭発表)

現在、地球温暖化防止として、化石燃料の代替エネルギーが盛んに論じられている。然るに自然エネルギーと呼ばれるものは、エネルギー総量としては多くとも、年間に使える量は、化石燃料と比べれば桁違いに少ない。更に、自然エネルギーを利用するためには多くの資源を使う必要もある。持続可能な社会に近づくためには、現在は浪費レベルのエネルギー消費量を意図的に桁違いに減らす必要がある。その試算と提案まで。

「消防科学に基づく水蒸気と発電と地球環境の関係についての一考察」    野村 祐子さん (会場口頭発表)

消防科学の分野でこれまでに蓄積されてきた伝熱プロセスに関する知見に基づき、地球環境における主要な熱媒体としての水蒸気の役割に注目し、GX関連政策が気候変動の激甚化を加速する仕組みについて考察する。

「エネルギー政策と受益受苦構造」    藤堂史明さん (会場口頭発表)

行為には目的と計算が伴うが、複数の主体が関係し、受益受苦構造が一様でなければ、不公正あるいは持続可能でない行為も生じる。この問題が生じやすい政策領域「原子力発電」について関連する経済的事象について整理し、地域経済の持続可能性にとって有益な政策を展望する。

「福島原発からの汚染水に含まれるトリチウムのDNA構造はかいによる遺伝子毒性」    黒田洋一郎さん (会場口頭発表)

福島原発からの汚染水の海洋放出で危険性の高いのは,トリチウムなど放射性物質類が、海中で食物連鎖で生体濃縮し魚貝類に溜ることです。特にトリチウム(3重水素)はβ崩壊してヘリウムに替わるので、「水素結合で保っている、DNAの二重らせん構造」が崩壊します。これは一塩基単位の通常の突然変異と全く違い,生物が進化の過程で経験していないもので,通常の突然変異のように修復酵素システムが全くありません。小さな突然変異でも,ヒトではガンが発生し奇形児が生まれる可能性が大きくなりますが、このDNAの構造崩壊では,もっと酷い状態(例えば、DNAの転写が出来ず,体中の蛋白発現が出来なくなるための「突然死」など)が予想されます。日本にも、トリチウムの専門研究機関が富山大にありトリチウムによるDNA崩壊などヒトを含む生物への悪影響は2年前に,酵素関係の専門国際誌に論文が出ました。

 

「市民による東京電力福島第一原発沖1.5㎞での海洋調査 ~8年半の歩みと記録~」    水藤周三さん、福本敬夫さん (会場口頭発表)

いわき放射能市民測定室たらちねでは、2015年から東京電力福島第一原発の沖合1.5km地点でのサンプリング調査を年2~4回、実施している。調査内容は、海水、魚、プランクトンを採取し、Cs-137やCs-134、Sr-90、トリチウムなどの測定を行い、記録している。本報告では、8年にわたる調査の内容と測定データについて報告する。

 

「生命系を重視する熱学的思考」とは何であったかー  ふつうのことばでエントロピーを捉え直す試み ー  」   馬場浩太さん (会場口頭発表)

「エントロピーは拡散の度合いを定量的に示す量である」という表現は、その単位が「J/K」であるということと相まって、広い分野や、ふつうの市民にとって、エントロピーが捉えにくいものである一因だったのではないだろうか。エントロピーという量は、体積という量が物分子の広がりを表す示量変数であると同じように、示量変数ですから、「熱」についての「広がり」を表す量として、目に思い描けるような単位で表されてよいはずだ‥‥と昨年の研究集会で話しました。今回はそこから再スタートして、ふつうのことばでエントロピーを捉え直すことを試みたいと思います。

(* 現在までに申し込み分)