名古屋懇談会5月例会報告

テーマ:21世紀の医療を見る視点 -病院経営論に立脚して-
日時および場所:2008.5.17 15.00~17.30 於 中京大学
講師:平井孝治さん (資)公益経営研究所代表社員(前立命館大)
参加者:約17名

報告要旨:
平井さんの大きなテーマは公益経営学である。ヒズボラ(レバノンのシーア派組織)が市民に支持されている理由が医療、教育、雇用を重視した施策であることからもわかるが、国民の権利としてこの三つはとくに重視されるべきと考え、そのなかで大学院の教育メソッド(事例研究主体でなく、なにをすべきかを構成員から知恵を引き出す知恵が必要)とともに、とくに医療-病院経営に重点をおいて研究している。
 公益経営の三公準としては
 第一公準:構成員に付与する価値の公益性
 第二公準:顧客(や関係者)に給付する価値の公益性
 第三公準:組織の目指す価値の公益性
が挙げられる。近江商人も「売り手よし」「買い手よし」「世間よし」がモットーだった。

 近年、病院経営の赤字が問題になっているが大方のコンサルタントはビジネスの手法で「増患」対策とリピータの確保をアドバイスしており問題である。
 いま、一番問題になっているのは小児科のかかえる赤字であり、多くの病院で小児科の廃止と統合がすすめられている。
 問題は病院の原価計算の方法にある。
従来、医療業界をふくめサービス業では「サービス収益」から「サービス費用」を控除して「サービス利益」を計算しており、製造原価にあたるものが、「製品在庫」や「商品在庫」がないという理由で計算されておらずあいまいになっている。そもそもサービス業簿記はサービス業全盛のいまも日商の簿記検定にもない。
 平井さんの方式を一言でいえば従来「医業費用」として一括されているなかから、製造業でいう製造原価にあたる医療原価をぬきだしてまず、「医療総利益」を計算し、そこから「医業管理費」(一般管理費相当)をぬいて「医業利益」を計算することである。
 この方式で部門別に小児科の原価計算をすると他部門の費用を不当に小児科が負担していることがわかり、小児科も決して赤字でないことがわかった。
主な質疑:
Q:研究部門をどう考えるか
A:医療の研究は生存権にかかわる問題であり、看護師、医師を育てる義務が国にある。
 医療報酬で人材育成を担保しろというのは問題
意見:演者が最初にいわれた高齢者になると職場がないという問題に関連するが、高齢者医療の問題も高齢者に生きがいを与えることで大幅に削減できるのでは思う。そういった問題もぜひ研究してほしい。
エントロピー学会の高齢化を反映して高齢者問題に話題がおよぶと議論沸騰する傾向があった。こんご、若手にまけないで高齢者問題のシンポをしたらどうか。
(以上 文責安藤直彦)

5月例会:21世紀の医療をみる視点 ー病院経営論に立脚してー