エントロピー学会 第25回シンポジウム 呼びかけ文

エントロピー学会 第25回シンポジウム 開催要項

呼びかけ文
新潟へ集い,環境と生活の新しい危機を考えよう

 新潟県は日本の豊かな水や自然に恵まれた代表的な穀倉地帯であり、また公共事業に依存した地域経済の特徴を備えた、典型的な地方であると言えます。また、県庁所在地である新潟市は、本年4月より人口80万人の政令指定都市としてスタートし、本州日本海側経済の一大拠点として発展を続けています。しかし、一方で郊外型開発の進展と自動車利用の拡大、それに伴う公共交通の衰退など地方に特徴的な問題もまた進行中であり、エネルギー多消費型の経済システムや原子力開発への依存、環境汚染など多くの問題を抱えています。
 エントロピー学会第25回シンポジウム実行委員会では、このような諸問題が、新潟において起こっているだけではなく、日本全体において起こっている環境と生活における新しい危機全般の一つの表れである、と考えました。そのような現状認識からはじまって、私たちが考えた解決策は、新しい環境危機の構造を明らかにし、生命をはぐくむ環境の保全を図りながら、ともに発展できる地域のあり方を構想するため、エントロピー学会の皆様にご参集いただき、大いに議論をして展望を切り開こう、というものです。
 環境問題を考えるには、根本として、公害問題の被害者の視点からの感覚と感性が必要です。記念講演として笹口孝明(元新潟県巻町長)の「巻原発・住民投票について」と坂東克彦(弁護士,元新潟水俣病弁護団長)の「新潟水俣病を闘って」(仮題)が行われます。どちらも新潟で起こった代表的な環境・公害問題の事例に関して、住民・被害者の視点がどのように闘いとられてきたか、歴史と展望を学べるものとなっています。続いて、基調講演では丸山真人(エントロピー学会)よりエントロピー学会で行われてきた研究・活動を地域経済における問題と展望へとつなげる講演が行われる予定です。歴史に学び、その問題意識から身近な問題を問い直し、解決してゆくための視点が見いだせることと期待しています。
 また、地域の置かれた状況と環境問題の現状に関する認識に基づいて、『新潟から環境と生活の新しい危機を考える』をシンポジウムの大きなテーマとしました。また、個別の領域の議論を深めるための個別のテーマとして、エネルギー消費や環境負荷に関わる問題を主な対象としたセッション:『エネルギーの大量消費と新しい危機』、そして環境問題の認識と環境科学や施策の在り方の議論を深めるため、方法論に着目したセッション『環境問題をどうとらえるか』を設定しました。
 また、新潟という地域において具体例から問題に迫るために『地域の交通と経済の課題』と題して、公共交通を活用した街づくりを目指す市民活動など、事例への取り組みを中心としたセッションも設定しました。
 会員の皆様にはこれらの実行委員会の問題意識と主題をできる限り共有していただき、積極的に、これらの各セッションに参加・発表してくださるようにお願いいたします。
 もちろん、従来の一般講演も各セッションと並列して時間・場所を確保してあります。発表予定の個別テーマが主題に沿わないとお考えの場合、こちらにお申し込みください。
 今日、多少の経済の低迷は起こりつつも、いまだに物質文明は隆盛を極め、物質的消費が拡大するのは当然のこととなっています。そして、市場の万能が誤って喧伝され、個人や法人の利己心の拡大と競争こそが社会の富を増大させると信じられています。環境問題はそのような人為的な価値の体系に対する警鐘であると共に、自然と人間とのかかわり、人間らしい暮らしと生き方を考える大きなきっかけとなるものではないでしょうか。
 公害被害者の受けた惨禍への共感から出発し、地域からの問題意識に根差したうえで、地球規模での環境システムの理解に基づいて熱学的思考をもって世界を展望しようとする本学会にとって、新しい危機は新しい飛躍のきっかけともなるでしょう。会員諸氏の積極的なご参加と運営へのご協力を期待しております。

エントロピー学会第25回シンポジウム実行委員長     藤堂史明(とうどうふみあき)
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