2018年 春の研究集会

≪2018年春の研究集会のご案内≫
人口減少社会における持続可能性を考える

本年度「春の研究集会」を世話人会に先立ちまして6月2日(土)、3日(日)の両日國學院大學渋谷キャンパスにて開催いたします。
日本は「世界最高の長寿命のもとでの持続的人口減少」という人類未踏の社会に足を踏み入れつつあります。その人口モメンタムが「もしかすると絶滅モードに突入しているのではないか」ということを資源統計学的アプローチから明らかにすることができます。そのような状況にあって、われわれは世界といかに共生し、どのような将来設計を描けばいいのでしょうか。春の研究集会では、この問題について皆さんと幅広く議論したいと思います。

【日 時】 2018年6月2日(土)、3日(日)
【会 場】 國學院大學渋谷キャンパス
【テーマ】 人口減少社会における持続可能性
【内 容】
・一日目(6月2日(土)  会場:5号館2階5202教室)
13:00 ~ 14:00   講演  倉阪秀史さん「人口減少社会で気づく持続可能性の経済学-フロー管理からストック管理へ」
14:00 ~ 15:00   講演  村山和彦さん「エントロピー、人口減少そして都市計画」
15:15 ~ 17:15   パネルディスカッション
(倉阪さん、村山さん、古沢さん、青木さん)

*)パネルディスカッションに先立って、古沢さんに共生社会に関する諸動向について、青木さんに資源統計学的手法を応用して推計したわが国の人口動態について手短に報告を行います。
*)講演会終了後、学内生協食堂において懇親会を実施する予定です。

・二日目(6月3日(日)、 会場:3号館5階3502~3505教室)
10:00 ~ 13:00    一般講演

  • ≪一般講演  会場:3502教室≫二日目(6月3日(日)午前10時より)

・「自然災害へのコミュニティの力 ―伝統知・文化の甦りにみる幾つかの地域動向―」

(佐野和子、國學院大學大学院特別研究生、 古沢広祐、会員)

東日本大震災では、避難の際やその後の避難所運営、基幹産業の再生など、震災時と復興に求められたものは地域住民のコミュニティ力であった。

そのコミュニティの力はどこからくるのか、地域に根付く伝統文化に焦点をあて三か所の事例から考察する。

 

・「利用可能エネルギー、生態系、そして人類の経済‐エントロピー経済学の視点‐」

(藤堂史明、会員)

原子エネルギーの環境経済システムにおける位置づけについて、代表的研究における考え方を検証する。明らかにしたいのは、原子エネルギー利用についての批判的理論が、システムのエネルギー投入産出構造の批判から、また費用便益的な分析を含む経済学的な批判と結びついて、エネルギー産出システムとしての批判に移行した際に、既存の原子エネルギー利用批判とどのような差異が生まれたか、エントロピー経済学の独自性は何かという点である。

 

・「日本の電力産業における需要先別事業収支の研究」

(青木秀和、会員)

本研究においては、まず電力産業の歴史的推移と構造的特性を明らかにする。電力産業は、この推移・特性を全面的に引き継いで今後の展開を図るしかない。一方、人口減少による需要減退は避けられず、電力インフラは需要に対して容量的に過剰になっていく。電力関係者の一部では、この状況に備えて、対応を模索し始めている。しかし、政府の政策レベルではこれへの認識が圧倒的に不足しており、期待成長率から電力需要を導き、それに立脚して電源構成を準備するという電力政策のあり方が、電力産業の最大のリスクとなる可能性があることを指摘する。

 

・「PKS(パームヤシ殻)発電と関連事業の日本での展開とその問題点」

(室田武、会員)

マレーシアやインドネシアでは、1970年代からアブラヤシ栽培・食用パーム油の生産が急拡大した。これに伴い、様々な環境破壊が引き起こされてきた。問題点の一つとして廃棄物問題があり、近年、パーム油工場の近傍の水系の汚染が目立っている。アブラヤシ産業からの廃棄物は有機物であるから、発生量が無制限に伸びることがないならば、処理・処分のありかたとしてそれを有機資源とみなし、有効利用する方法がないわけではない。どこで有効利用するかという点に関しては、グローバル化の進んだ今日においては、廃棄物発生国としてのマレーシアやインドネシアでの活用技術の開発だけでなく、有機資源として海外に輸出するという方法もある。日本においてこの点で最近最も注目されているのがPKS、すなわちパームヤシ殻(Palm Kernel Shell)である。具体的には、これを輸入して蒸気タービン方式の火力発電所の発電燃料にするもので、本講演へ向けての調査により、日本全国では2017年秋までに既に34カ所の既設、建設中のものがあることがわかった。

本講演は、こうした日本のPKS発電の歴史と現状の紹介と分析、およびその問題点の指摘を目的とするものである。なお、パーム油産地と日本などの間で、廃棄物でなく生産物そのものであるパーム油をディーゼル発電の燃料にする動きがある。日本でもそうした発電所の既設例が二つあり、もうひとつ建設中のものがある。これは、油糧作物として重要であったパーム油を発電燃料として燃焼させてしまうものである。本講演では、既にプランテーション栽培の拡大によって熱帯生態系の破壊を進めてきたアブラヤシ産業の問題を一層深刻化するものとしてこの輸出入問題を考察する。

 

・「原発はどのように壊れるか -金属の基本から考えるー」

(井野博満、会員)

 

・「マレーシアにおけるエィジアン・レアアース(ARE)事件の負の遺産」

(和田喜彦(会員)、福本敬夫(会員)、リー・タン)

30年ほど前に発生したエィジアン・レアアース(ARE)事件は、ARE社による放射性廃棄物の不法投棄が引き起こした放射線被曝事件である。法廷の場での証言の中で明らかになった汚染区域は除染され、放射性廃棄物は最終処分場に搬入された。しかし、住宅区域にありながら、証言から漏れた場所があるのではないかという不安の声が住民から寄せられていた。著者たちは、不法投棄を実行したとされる請負業者から情報を得て、疑わしい場所に赴き調査を実施した。その結果、強い放射線を発する箇所が見つかった。ARE社と親会社の三菱ケミカル社による誠意ある対応(=除染)が急務であることが示された。

・「福島原発事故による環境汚染 -その後の測定結果の報告―」

(福本敬夫(会員)、山田國廣

 

 

【資料代】  一日目のみ  会員1000円、非会員1500円、学生無料
(二日目の一般講演はどなたでも無料です)
【連絡先】  学会事務局または福本(fukumoto@chem.sci.osaka-u.ac.jp)まで。