原発震災関連情報 2011年4月10日更新  藤堂史明

原発震災関連情報 2011年4月10日更新  藤堂史明

2011年4月27日更新 原発震災関連情報へ

原発震災関連情報 2011年4月10日更新
東北関東大地震及び津波災害で被災された方々に、お見舞いを申し上げます。
地震・津波は天災ですが、これにより引き起こされた福島原発の原発震災は、有識者からの度重なる指摘、告発を無視して地震集中地域である日本に原発を推進、設置してきた行政・電力会社・原子力研究者・マスメディアの「原子力利権」による人災です。
 広瀬隆氏の『原子炉時限爆弾』ダイヤモンド社(2010/8/27)は、福島原発に起こった事態について的確に予想しており、浜岡原発、高速増殖炉「もんじゅ」や六ヶ所村など、多くの核施設を抱える日本に住む私たちに警鐘を鳴らしていました。今こそ原子力の平和利用という幻想を見破り、事実としての危険性に気がつかなくてはなりません。
 真に責任ある施政と国民生活の安寧を求め、原子力推進政策を改め、環境負荷の逓減と社会的な安全を図ることが出来るエネルギー供給体制と経済構造を求めます。また、安全性審査と認可制度そのものが、「原子力ムラ」と呼ばれる利権のもたれ合い構造の下、事実上機能していないことが明白となった以上、従来の制度下で建設・認可・運営されてきた既存の原子力発電所については、全て稼動を停止し、安全性及び将来構想について計画・審査制度そのものから再検討されねばなりません。
 簡易に関連する情報を収集できるよう、これまでエントロピー学会関連のML等で寄せられた情報と、情報サイト等のリンクをまとめました。リンク先の内容検証、リンク許可はとれておりません。参考のために一覧としています。ただし、筆者のコメント及びリンクを記載した責任そのもの(文責)は筆者にあります。
 関連する情報についてお知らせください。また、リンク切れ、誤記訂正、ご意見などもありましたらお教えください。 E-mail: toudou(@)econ.niigata-u.ac.jp (藤堂 史明)

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NEWS:
福島第一原発の1号炉をはじめとする事故炉の現状分析
1.【福島原発】2011/4/8/金 1号機再臨界の可能性を懸念

京都大学原子炉実験所 小出裕章氏(FM797京都三条ラジオカフェのUstream)
http://www.ustream.tv/recorded/13851905
【大切な人に伝えてください】小出裕章さん『隠される原子力』
http://www.youtube.com/watch?v=4gFxKiOGSDk
2.『柏崎刈羽原発の閉鎖を訴える科学者・技術者の会』Group of Concerned Scientists and Engineers Calling for the Closure of the Kashiwazaki-Kariwa Nuclear Power Plant―――による『「福島原発震災」をどう見るか見解(その2)』
http://kk-heisa.com/data/2011-04-07_kkkenai2.pdf
が公表されました。
4.原子力安全研究グループ
福島事故、スリーマイル島事故、チェルノブイリ事故関連資料3月28日と29にかけて飯舘村周辺において実施した放射線サーベイ活動の暫定報告(2011年4月4日)
http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/NSRG/seminar/No110/iitatereport11-4-4.pdf
が更新されています。
5.エントロピー学会が福島原発事故の情報サイト:
https://entropy.ac/information_category/nuclear_disaster/
を開設しています。福島原発事故の時系列経緯、累積被曝線量計算モデル、フランクフルター・アールゲマイネ(FAZ.net)記事抄訳などが公表されています。
また、エントロピー学会では4月23日、24日に春の研究集会を京都で開催します。プログラム(4月 10 日版)は以下の通りです。広瀬隆氏の講演、飯舘村現地調査の報告、後藤政志氏の報告、そして室田武氏の「原発廃炉の経済学に向けて:二酸化炭素 1990 年比25%の検証」などのプログラムが予定されています。
https://entropy.ac/information_category/nuclear_disaster/
6.関連する解説等(以前に紹介していなかったもの)
予言されていた”原発震災”/広瀬隆氏インタビュー(2011/3/20)
http://www.youtube.com/watch?v=ovv2__vc-Nk&feature=fvwkrel
CNIC-News で 4 月 3 日に放映された田原総一朗 x 孫正義 x 田中三彦 x 後藤政志 緊急対談「東日本大震災」がビデオアーカイブされています。
http://www.ustream.tv/recorded/13845813
原発震災を警告してきた地震学者:石橋克彦氏ホームページ「石橋克彦 私の考え」
http://historical.seismology.jp/ishibashi/opinion/2011touhoku.html
石橋克彦「原発震災-破滅を避けるために」岩波書店「科学」1997 年 10 月号
http://www.iwanami.co.jp/kagaku/K_Ishibashi_Kagaku199710.pdf浜岡原発運転差し止め訴訟で争われた論点と裁判所の判決まとめ
原子力資料情報室の関連サイト:
http://cnic.jp/modules/news/article.php?storyid=581
国会質問で原発震災について追求していた吉井英勝議員のサイト
http://www.441-h.com/message.html
以下の大前氏の解説ですが、原発の現状の分析については的確と思います。しかし、大前氏に限らず、条件付の原発存続論者の皆様は、この地震列島日本で原発の安全性が努力次第で確保できる、核廃棄物を比例的に産出しても原子炉を維持すべきと、未だに考えているのでしょうか?顕在化した巨大なリスクにバランスさせるどんなメリットを考えておられるのでしょうか?私は、原子力産業は実質的に廃炉・廃棄物管理関連業務での存続しかないと考えています。それは、人類が存続する限り必要な業務となるでしょう。
大前研一氏(大前研一ライブ)
「福島第一原発 現状と今後とるべき対応策」(2011/3/27)
http://www.youtube.com/watch?v=5mBlngPiaSY
「福島原発 政府、東電の対応と東北再生のシナリオ」(2011/4/3)
http://www.youtube.com/watch?v=0Igl8bSdBKs
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ここでは
1.事故炉の現状、原発震災による放射性物質拡散・汚染状況
2.健康・生活面における放射性物質の危険性への対応
3.事故原発の動向と今後のエネルギー政策、国民生活
について考えるための情報を収集、更新していきます。
また、
4.関連サイト
については頁末にまとめます(重複掲載含む)。
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1.原発震災による放射性物質拡散・汚染状況
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1-1 概況
<海外>
以下のサイトでは福島原発からの放射性物質の大気中拡散のシミュレーションを掲載・更新しています。
オーストリア:気象地球力学中央研究所: Zentralanstalt für Meteorologie und Geodynamik(ZAMG) #特集ページのURLが更新されています。
http://www.zamg.ac.at/wetter/openair/eventwetter_za1.php
ドイツ:気象局:Deutscher Wetterdienst (DWD)
http://www.dwd.de/
フランス:放射線防護原子力安全研究所:Institute for Radiological Protection and Nuclear Safety(IPSN) 原発からの海水汚染の影響シミュレーションも更新されています。
http://www.irsn.fr/EN/news/Pages/201103_seism-in-japan.aspx
アメリカ:New York Timesの情報サイト(Radiation Levelに福島原発周辺の放射線線量に関する情報)
http://www.nytimes.com/packages/flash/newsgraphics/2011/0311-japan-earthquake-map/index.html
日本における放射性物質の拡散シミュレーションは海外のTV放送では報道されてきましたが、日本においては皆無です。
例:ドイツZDFネット配信http://www.zdf.de/ZDFmediathek/beitrag/video/1289632/Hoffnung-
auf-stabile-Situation-in-Japan?setTime=4#/beitrag/video/1289724/Ben-Wettervogel:-So-wird-der-Sonntag<日本国内>日本では原子力安全委員会が2011年3月23日に「緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)」による放射性物質拡散のモデル計算を公表しています。
http://www.nsc.go.jp/info/110323_top_siryo.pdf
また、当初より日本の気象庁において放射性物質の拡散シミュレーションが計算され、IAEAに提出されていましたが、ようやく日本国民向けにも公表がされるようになりました。(公開日についてデータがありませんが、4月5日のようです。)
最新のシミュレーション:
http://www.jma.go.jp/jma/kokusai/EER/eer_latest.pdf
また、想定外の巨大地震との印象操作ではないか、ともいわれている気象庁の震度表記について、気象庁に質問を送りました。
https://jma-net.go.jp/cgi-def/admin/C-101/opinion/postmail.html
質問内容:「質問です。東日本大震災について、気象庁は震度表記を気象庁マグニチュード(Mj)からモーメント・マグニチュード(Mw)に変更し(当初の8.4から9.0への変更)たというのは事実ですか?そうである場合、そうでない場合、いずれでも、震度表記の変更経緯についてご教示いただけると幸いです。また、以下の情報の表記単位を教えてください。
http://www.seisvol.kishou.go.jp/eq/daily_map/japan/20110311_list.shtml
公式ページ等の解説を教えていただくのでも結構です。見つけられませんでしたので。」
参考:島村英紀氏「追記 2011年3月11日に東日本を襲った巨大地震の”マグニチュード9″とは」
http://shima3.fc2web.com/kyousei-atogaki.htm
福島第一原発事故に関連する総合的なデータ一覧が可能なサイト
(全国の放射能他、水道、原子炉状態、海水、福島の放射能詳細、拡散予測総合情報の一覧)
http://atmc.jp/
福島第一原子力発電所ライブカメラ(静止画)
ふくいちライブカメラ
http://www.tepco.co.jp/nu/f1-np/camera/
原子炉周辺
福島第1及び第2原子力発電所周辺のモニタリングカーによる空間線量
http://www.mext.go.jp/a_menu/saigaijohou/syousai/1304001.htm
<<事故発生の責任機関>>
<<東京電力(プレスリリース)>>
http://www.tepco.co.jp/nu/f1-np/press_f1/2011/2011-j.html
内閣府
http://www.cao.go.jp/
<<経済産業省東日本大震災関連情報>>
http://www.meti.go.jp/earthquake/index.html
<各県別の放射性物質による汚染状況(リンク先は変更される場合があります)>
文部科学省による都道府県別環境放射能水準サイト
http://www.mext.go.jp/a_menu/saigaijohou/syousai/1303723.htm/
(ミラー):http://eq.yahoo.co.jp/
また同省原子力安全課によるPRサイト:環境防災ネット
http://www.bousai.ne.jp/vis/index.php
1-2 詳細
東日本各県のサイトを以下に掲載。
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<東日本各県のデータ(放射線モニタリング及び、水道・農作物等情報)>
北海道:http://www.pref.hokkaido.lg.jp/sm/gat/zenndoumonita.htm
青森:
http://gensiryoku.pref.aomori.lg.jp/atom/index.html
岩手:http://sv032.office.pref.iwate.jp/~hp031501/hou.html
宮城:http://www.pref.miyagi.jp/gentai/Press/PressH230315.html
福島(地震被害全般からリンク):http://www.pref.fukushima.jp/j/index.htm
茨城:http://www.houshasen-pref-ibaraki.jp/present/result01.html
(推移グラフ化した個人のサイト:
http://guregoro.sakura.ne.jp/radioactivity/ )
(東海・東海第二発電所の放射線監視状況(トレンドグラフ))
http://www.japc.co.jp/pis/tokai/trend2.htm
山形 http://www.pref.yamagata.jp/ou/kenkofukushi/090001/houshasen.html
山形(大量の放射線が放出される場合の対処)
http://www.pref.yamagata.jp/ou/somu/020020/03/fukkou/tairyouhoushasen.html
新潟
放射線モニタリングデータ
http://www.bousai.pref.niigata.jp/m/kinkyu_sizen/1592/index.html
放射線関連、水・食品等情報
http://www.bousai.pref.niigata.jp/contents/538/index.html
長野:http://www.pref.nagano.jp/kankyo/kansei/houshanou/houshanou.htm
栃木:http://www.pref.tochigi.lg.jp/kinkyu/houshasen.html
群馬:http://www.pref.gunma.jp/05/e0900020.html
埼玉:http://www.pref.saitama.lg.jp/page/housyasenryou.html
千葉:http://www.pref.chiba.lg.jp/taiki/h23touhoku/houshasen/index-sokutei.html
東京:http://ftp.jaist.ac.jp/pub/emergency/monitoring.tokyo-eiken.go.jp/report/report_table.do.html
神奈川:http://www.pref.kanagawa.jp/sys/bousai/portal/6,3982,14.html
(推移グラフ化した個人のサイト:
http://guregoro.sakura.ne.jp/radioactivity/kanagawa/ )
気象条件
気象庁による風向観測
http://www.jma.go.jp/jp/amedas/205.html?elementCode=1
風向(海上中心ですが)
http://weather.goo.ne.jp/wave/wind.html
拡散の具体的シュミレーションについては上記の海外サイトの予測をご覧ください。
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2.健康・生活面における放射性物質の危険性への対応
内閣府・経済産業省・東電からの説明が責任回避のためか、過度に放射線のリスクを低く表現したり、誤解を招く比較を行ったりしています。放射性物質のリスクに関して一貫して低評価の傾向が見られます。なお、官庁系のサイトにおいて空間放射線の強度に関して「健康に影響を与えるレベルではありません」等の記載が多数見られますが、これは被曝線量における「閾値」が存在するという仮説に依拠しているか、あるいは急性の被曝症状についてのみ述べているかであり、バイアスのかかった表現です。放射線への被曝については、ある程度以下であれば安全という閾値がなく、被曝線量に見合ってリスクが高まる可能性があります。また、空間線量の高さが放射性物質の拡散によるものである以上、空気・水・食品も汚染されており、内部被曝も考慮する必要があります。低線量被曝に関する参考サイト(アーネスト・スターングラス博士講演録):http://fujiwaratoshikazu.com/2011disaster/index.html100mSv以下であれば健康に影響がない、という言説が一種の仮説に過ぎず、論争がある上、国際機関でも採用されていない点についての解説。なおこれはリスク物質について「閾(しきい)値」がないということに対応しています。私の意見でも、低線量被曝でも量に応じた比例的な発ガン・突然変異などの影響があると考えています。
ゲンダイネット:
近藤誠・慶大医学部講師が緊急寄稿「100ミリシーベルト以下の被曝量なら安心」はウソっぱち!
http://www.gendai.net/articles/view/syakai/129864
行政・マスコミの放射能の安全性に関する医療情報の出所と思われる
放射線医学総合研究所
http://www.nirs.go.jp/index.shtml
経済産業省の核燃料系のキャリア官僚を役員に迎えています。
http://www.nirs.go.jp/about/officer.shtml
関連するブログ等
武田邦彦氏のサイト
http://takedanet.com/
放射線に対する健康・安全面での考え方、状況分析など。いわゆる「専門家」の説明も批判的に分析しています。原子力推進の専門家の中では極めて慎重・中立的な情報を提供しています。
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3.事故原発の動向と今後のエネルギー政策、国民生活
 電気事業連合会加盟各社から多額の広告費を受け取っている主要メディアでは、脱原発の動きについて全く報道されません。例えば ZDF など海外メディアはニュースで取り上げています。
http://www.zdf.de/ZDFmediathek/beitrag/video/1289632/Hoffnung-auf-stabile-Situation-in-Japan?
setTime=4#/beitrag/video/1298394/Neue-Atomkraftgegner-in-Japan
脱原発は科学的知見・政策提案として訴えるだけでなく、具体的な変革のための行動を必要としています。アイデア・取り組みについてお知らせください。これらの項目についての情報を募集します。
植草一秀氏のサイト
3 月 20-21 日の降雨について注意を呼びかける植草一秀氏のブログ(関連して脱原子力政策についても提案)
http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/2011/03/320-21-9886.html
については紹介しましたが、その後も植草一秀氏のブログが、原子力利権の制度的性質と、今後のエネルギー政策を考える上での意見を述べられています。産官学一体となった利権配分の仕組みで、国民の安全を脅かす原子力開発がなぜ行われてきたか、考えるヒントとなるでしょう。
「原発推進=人類滅亡導く米官業政電+学利権複合体」
http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/2011/04/post-3e60.html
「厳正な事故賠償コスト強制が脱原発を誘導する」
http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/2011/04/post-ce4d.html
「原発事故加害者が被害額大幅圧縮に突き進む暴挙」
http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/2011/04/post-ea3c.html
環境エネルギー政策研究所(ISEP)等のエネルギー政策提案について
 この研究所については既にご紹介してきたとおりです。以下にご紹介するレポートは、電力需給の見通し、省エネルギーの政策提案などの点で評価できるものです。ただし、これだけの事故と、原子力推進体制下での安全性審査の無意味さが露呈した後でも10年程度、原子力発電を維持した上での新エネルギー開発プランを提案している点は理解に苦しみます。既存原発について技術的・制度的側面の両面において安全性を保証できる状況にはないと思います。
■4/05(火)ISEP プレスリリース(PDF)
「3.11 後のエネルギー戦略ペーパー」No.2 3.11 後の原子力・エネルギー政策の方向性 ~二度と悲劇を繰り返さないための6戦略~
環境エネルギー政策研究所 所長飯田哲也
http://www.isep.or.jp/images/press/ISEP_StrategyNo2.pdf
■4/04(月)ISEPプレスリリース(PDF)
「3.11後のエネルギー戦略ペーパー」No.1「無計画停電」から「戦略的エネルギーシフト」へ【改訂版】環境エネルギー政策研究所 所長飯田哲也、主席研究員松原弘直
http://www.isep.or.jp/images/press/ISEP_Strategy110404.pdf
No.1では「無計画停電」と東電の業務を批判しつつ、実態の需給ギャップについて分析、また設備容量と電力利用実績について解析して、東電管内の原発を全て止めても、短期的に戦略的な電力需要の管理施策
その1:家庭および中小業務ビル等小口電力(50kW 以下)の一律契約アンペアの引き下げ
その2:ピーク料金の適用(主に50kW~500kW 以上の需要家)
その3:需給調整契約の活用(主に500kW 以上の需要家)
また、非効率な電気暖房・電気温水器の追放を含む家庭及び中小業務ビルにおける節電対策等を実施すれば、電力需給については問題がない、としています。
 このように、短期的な需給状態の分析、対策においては原発を停止しても問題がないことを提示している同報告書ですが、以下のように中長期的な見通しとしては、原発にやや甘い見通しを示しています。というのは、「原子力は自然減と震災損傷を考慮して約10%もしくは2020年までに全廃」(No.1:2頁)とし、部分的な停止を提案しつつも、部分的に存続させる方針を示しています。
 もはや既存の原子力発電の安全性がまるで担保されていないことは明白となりました。それが1基であろうと、大変なリスクを持つ原子力発電の延命は、即、日本国民の滅亡に繋がる可能性があり、それがいつになるか(2020年まで待ってくれるか?)分からない以上、もっとも大切な人命尊重を後回しにすべきではないでしょう。筆者はこの報告書の見解は、現状維持のバイアスにより不十分な提言になっていると思います。
 また、「気候変動政策・低炭素社会構築にエネルギー政策の転換を反映させる。」(No.2:2頁)、「気候変動政策・低炭素社会構築としたエネルギー政策との相乗的な統合」「大量エネルギー消費維持&原子力拡大が、気候変動政策(地球温暖化対策)の選択肢としては相容れないことがはっきりした。」(No.2:7頁)としています。また筆者は、自然エネルギーの開発が脱原発の条件である、といった論点のフレームアップには同意できません。(レポートにはそのような立場は明記してありませんが、自然エネルギーへの移行の必要性を強調する裏にはそのような論理があります。原子力推進の立場の人々もこの論理を利用します。)
 短期的には火力・水力により脱原発が可能、しかし中長期では自然エネルギーの開発ができなければ原発維持やむなしという論理は、「地球温暖化問題」が「放射能汚染問題」より重要な問題であるということを証明した上でなければ成立しません。 
 しかし、そもそも地球温暖化問題は、環境問題として原子力による放射能汚染よりも重要度が高いのでしょうか? この点についてきちんと論じた議論は、原子力推進の側からも聞いておりません。多くの「地球温暖化問題」研究者は、「低炭素社会」は原発推進のためのプロパガンダであるという指摘を受けつつも、それには直接的に反駁せず、化石燃料の燃焼そのものは有害であるという論点(全体を俯瞰しない論点)に後退し、結果として原子力推進の体制に参加してきました。
 元々、環境負荷の指標を二酸化炭素とし、低炭素を環境政策の目的とすること自体が、そのものとしてほとんど誤っています。(ほとんど、と言うのは化石燃料の燃焼の結果、「のみ」に着目すると確かにその削減が環境保全に望ましいからですが、)「低炭素社会」が、実際上、代替的エネルギーとしての原子力推進のための施策であるにも関わらず、素知らぬ振りで低炭素の枠組みで環境研究をし、資金を得てきた論者の方々に反省していただきたいことです。
 筆者は省エネ・脱原発、自然エネルギー利用拡大全てに賛成ですが、原子力発電による放射性物質の蓄積と拡散は、化石燃料の燃焼による有害性を上回っており、子孫に与える影響も大きく、従って、中長期において、人道上の必要から二者択一が避けられないならば、局地的な熱平衡や有害物質対策に配慮しつつも、化石燃料消費を選択するべき、と考えています。
#なお、2010 年 10 月 16 日、17 日 京都 同志社大学のエントロピー学会シンポジウム基調講演においては、『低炭素社会という名の高ウラン社会を問う』と題し、室田 武氏により、二酸化炭素濃度が長期的に増加していることを世界で最初に突き止めたキーリングの研究に、専門家以外で真っ先に着目したのは、当時アメリカ政府のエネルギー研究開発局(ERDA)傘下の研究所の所長であり、マンハッタン計画にも参加し、原子炉の開発を主導してきたワインバーグであることが指摘されています。
出典:室田 武「エントロピー学会第 28 回大会基調講演予稿(2010 年 10 月 16 日・17日、京都、同志社大学臨光館)低炭素社会という名の高ウラン社会を問う」、『エントロピー学会第 28 回シンポジウム予稿集』。
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4.関連サイトリスト(重複掲載あり)
原子力発電に関する市民科学の立場からのサイトです。今回のような惨事は以前から繰り返し指摘されてきました。
原子力資料情報室のサイト
http://www.cnic.jp/
原子力資料情報室 NEWS(CNIC NEWS) Ustream)
原子力資料情報室の CNIC-NEWS が原発事故の解説を U-Stream 放送中です。(時間帯はサイトに掲示されます。また再放送も行っています。)
http://www.ustream.tv/channel/cnic-news
混雑している場合、ミラーの JunsTV のサイト(http://www.ustream.tv/channel/junstv)で受信できます。
NO NUKES PLAZA たんぽぽ舎
http://www.tanpoposya.net/main/index.php
広瀬隆氏・槌田敦氏・菅井益郎氏による解説の Ustream 配信など
http://www.ustream.tv/channel/tanpoponews
原発震災の危険性を訴えてきた科学者達
『柏崎刈羽原発の閉鎖を訴える科学者・技術者の会』
http://kkheisa.blog117.fc2.com/
環境エネルギー政策研究所(ISEP)
福島第一原発の事故関連情報のページを開設して状況を分析しています。
http://www.isep.or.jp/fukunp110311.html
原発がどんなものか知ってほしい(平井憲夫)
http://www.iam-t.jp/HIRAI/pageall.html
ミツバチの羽音と地球の回転 Official Blog
http://888earth.net/staffblog/
エントロピー学会 原発震災関連情報(リンク元)
https://entropy.ac/information_category/nuclear_disaster/
ネットニュース関連
普段より電気事業連合会加盟各社より多額の広告費を受け取っているマスメディアは、情報源としての中立性・速報性について、そしてそもそも日本国民の生命・安全を守ろうとしているのか疑問です。
 それらを補える情報源として以下を挙げておきます。
ビデオニュース・ドットコム
http://www.videonews.com/
岩上安身オフィシャルサイト:
http://iwakamiyasumi.com/
有用と思われる(かもしれない)個人のサイト
以前から小学校への「わくわく原子力ランド」副読本配布など、教育政策における原子力宣伝を指摘するなど独自の情報収集・解説をしています。
低気温のエクスタシーbyはなゆー
http://alcyone.seesaa.net/
リアルタイムな情報(ただし内容については未検証なものも流れる)
東海アマ管理人氏(ツイッター)
http://twitter.com/tokaiama
まだ、未整理・不十分ですが、随時公開していきます。
2011年4月27日更新 原発震災関連情報へ