福島原発で再臨界? ダルノキ-べレス論文の概略

寺尾@元世話人さんによる
====== ダルノキ-べレス論文の概略 ======

次の二つの事実が大事です。

事実1:中性子が観測されたこと。
中性子が3月13~15日に、1、2号機南西1.5km地点で、13回観測された。

事実2:冷却海水中に放射性塩素-38が存在したこと。
1号機の冷却に用いた海水中に、塩素-38からの放射能が1ccあたり160万ベクレル測定された。これは塩素-38の濃度にすると1ccあたり51億6千万個に相当する。

この放射性塩素-38は、海水が含有する塩素-37が中性子を取り込み、ガンマ線を放出する核反応を起こした結果生成したものと考えられる。

生成する塩素-38の濃度は、中性子が1平方センチあたり、1秒間に何個流れるかが分かれば計算できる。

核燃料から発生する中性子線の流れの個数を評価するために、1号機の核燃料(連鎖反応は止まっているとして)が

1.溶融して底に溜まりその上を冷却海水が通る場合、
2.燃料は完全には溶融せず核燃料の間に空隙がありそこを海水が通る場合、

という、二つの場合を考え、それぞれ得られた個数の中性子によって生成する塩素-38の濃度を計算した。
その結果、濃度は1ccあたり最大に見積もっても、1.の場合で1万7100個、2.の場合は659個、何れの場合も、実測の51億6千万個よりはるかに少ない放射性塩素-38しか生成しないことがわかった。

したがって、核燃料中でもっと沢山の中性子を放出する局所的な臨界状態が生じたのではないか、と考えられる。

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この論文のアージュン・マキジャーニさんによる解説文の乗松聡子さんによる翻訳も出ていますので、お時間がありましたら是非、以下のサイトをご覧ください。

英文論文: http://www.japanfocus.org/-Arjun-Makhijani/3509

その英語日本語対訳(PDF版):
http://www.japanfocus.org/data/3509WhatCausedTheHighCL38JapaneseEnglish.pdf