累積被爆線量の計算表の解説

 計算表では、ある地点に居続けた場合の空間線量による被曝量が、どのくらいの時間(日数)でどのくらいになるかを見積もることができます。例で示しているのは、浪江町のポイントで、ぎりぎり30km圏外なので、避難や屋内待避の対象外になっていましたが、ようやく「計画的避難区域」になりました。
 このポイントでは測定開始以降の1箇月間で累積放射線量が既に 30mSvを超えており、原発労働者などの通常時1年間被曝限度の 50mSvに近付いています。測定開始前にも放射性物質が到達していると考えられ、福島県が公表している測定データにはこの方向(飯館村)で15日に数値が上昇したことが記録されています。
 測定開始前の放射線量も計算表で推定できます。浪江町のこの地点における15日から17日までの累積放射線量(計算例の赤字で表示)は、約 10mSvですから、これを加えると、既に 40mSvを超えていることになります。
 ところが、文部科学省は、この地点の「3月23日から4月10日まで」の累積放射線量が「14.48mSvになった」という報道発表をし、マスコミもそのまま伝えるという状況です。政府の「計画的避難地域」指定の基準を 20mSvを超えるおそれがある区域としたために、既に超えているということは言い難かったのでしょうが、詐欺的な発表と報道でしょう。
 菅井さんらが調査をされた飯館村では3月末で10~20μSv/hが観測されていますから、浪江町の半分くらいの値であり、これまでの累積被曝量は、やはり10 mSvを超えていることが分かります。
 福島県の公表している福島市のデータをモデル(2)に入れてみましたが、福島市内では20日間くらいの間に既に普通の人の年間許容量(1 mSv)の約2倍の放射線を被曝していることになっています。実測値の減少傾向が鈍っているので、風向き等で放射性物質が追加されていることを伺わせるものです。

 計算表の基本形では ヨウ素131の半減期からの推定を行っていますが、複数核種モデルではヨウ素131とセシウム137をに加えて、短期半減期の架空物質を設定しています。これは、実測値が高い値を示した後、すぐに大きく減少する傾向があるために実測と合うように仮定したものです。短期に半減する物質が存在することは事実ですが、ここでは特定の物質を考えているわけではありません。測定時に空中に
漂っていたものが、定着しないで飛び去った可能性もあるかもしれません。
 また、核種の比率は、実際の核種ごとのデータがないので、実測値に合うように適当に私が仮定したものです。
 なお、この累積放射線量は、空間線量のみの積算です。実際の被曝は、呼吸や食事等によって取り込んだ物質からの内部被曝も加えて考えないといけませんから、推計値の2~3倍を超える被曝の可能性があることも、含んで数値を御覧ください。川島和義 2011.4.21

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