フランクフルター・アールゲマイネ(FAZ.net)記事抄訳(13)

福島原発事故に関連する記事の表題と抄訳を安藤直彦会員が随時行う。(掲載伊津)

東日本の震災直後に遡ってドイツ政府の政策転換の過程を追ってみたい。福島直後の3月14日にメルケル首相は原子力政策の見直しを表明し、17日には国会で脱原発の方針を掲げている。メルケル政府は半年前に古い原発の寿命延長を一部野党の反対にもかかわらずに決めただけにこの方針転換はドイツ国内に大きな波紋を投げかけた。

2011年3月17日
(議会における討議)
Merkel首相:「将来を見通した脱原発」
彼女の政府説明においてMerkel首相はドイツにおける7つの原発の停止を弁護している。いわゆるモラトリアムは原子力法によって裏付けられている。SPDの委員長Gabrielはこれに対抗して首相を原子力経済の仲間とした。
 解説:メルケル首相は3月11日の福島の事故をうけ3月14日に2030年代まで延長するとしていた計画の3ヶ月間凍結、同時に耐用年数を経過している7つの原子炉の停止を発表、3月15日には原発のある州の首相と協議、同日国会に「将来を見通した」原発からの撤退を支持すると表明。3月17日「日本では明らかにあり得ないことが起こった」、そして「絶対にありそうにない現実がおこり得る」と述べた。さらに、ドイツの原発が世界一安全であり、気候保全に必要なエネルギーミックスであり、支払い可能な電量価格が重要であるとしても「安全に対する疑問」と言う原則が大事である、とのべた。野党はこれに反発し、首相の6ヶ月前のSPDと緑の党への脱原発攻撃は是認できない。この提案は331中308の有効票でモラトリアムへの賛成と最も古い7つの原子炉の停止が決まった。

2011年3月22日
(首相官邸における原発関連)
Merkel首相は倫理委員会に原子力を組みいれる
二つの外部委員会はドイツのエネルギー供給の将来について勧告をすべきであると3月22日(火)にメルケル首相は表明した。委員会の一つはモラトリアムの期間中に原発の安全基準について検査すべきである。
 解説:倫理委員会は原発だけでなく他のエネルギー形式についても勧告すべきとしている。首相は委員会の参加者の間で白熱した議論を期待している。委員会にはBruederle経済相(FDP)、Roettgen環境相(CDU)のほか、原発がある5つの州の首相が参加している。
モラトリアムの期間中に首相直属の原子炉安全性委員会は原子炉安全性の新しい問題に焦点を当てて作業すべきとしているが、この作業の終着点は日本の原子力災害の教訓をどうとりいれるかである。
4月15日にメルケル首相は16州すべての州首相と会談しとぎれとぎれになっている電力網の建設を急ぎ、北部の沿岸地区にある風力発電を南部への輸送を促進することを勧告する。されに再生可能エネルギーの時代により早く到達できるようにしなければならないとしている。

2011年3月23日
(内部からの批判)
(政党)連合の内部で首相への不満がつのっている
連合(CDUとCSU)とFDPとの会派内で不満がある。特に連合の内部で連邦政府の決定についての批判が大きくなっている。リビアへの出動についての決定における棄権と共に原子力政策についての方向転換に議論の余地がある。
解説:3月の時点ではリビアへの介入についてアメリカ、イギリス、フランスとの関係で結論を迫られていた時期であり、同時に脱原発を打ち出したメルケル首相への内部批判が高まっていた

2011年3月24日
(原子力議論)
発電所の閉鎖によって何が起きるか?
原子力から撤退の可能性はドイツでどのように考えられるのか、大停電の原因とならないのかなど、新しい発電所や電力網のより高度な研究が求められる。原発論議についての7つの質疑応答。
福島の災害は原子エネルギーの将来的な利用について世界的な議論が起きた。ドイツでは完全撤退を考えている。
Q1:原発の停止は大停電の恐れ?
A:7つの原子炉停止後にもピーク時の需要をカバーする十分な供給能力がある。電力網の安定性はエコ電力の不安定な供給に対してはすでに問題がだされている。勿論、ドイツの電力網の安定性は供給の遮断にたいして世界一高い安定性がある。
Q2:再生可能エネルギーへの移行は電力網にとってどんな意味があるか?
A:歴史的に発電所は需要地中心に作られていた。もし、北ドイツで風力などの新しい電力生産をすると需要地まで送電線を作る必要がある。
Q3:誰が電力網のコストを負担するのか?(略)
Q4:誰がドイツの電力網を運営するのか?(略)
Q5:外国への電力網はどうなるのか?(略)
Q6:ドイツの電力網の規模は?(略)
Q7:どれだけの新しい送電線が必要となるのか
ドイツ政府のエコ電力建設目標をもとに2020年までに新しく最高圧送電線が4000km以上敷設されねばならない。これには現在すでに反対もある。しかし、太陽発電、バイオガス発電、地熱発電、など分散型発電のために、さらに自家供給発電にも地方および地域の電力網が必要である。(中略)増大する種々の発電者をコージネートするためにより大きな大量情報技術が電力網のコントロールに必要である。専門家はスマートグリッドについて語っている。

2011年3月24日
(原子力エネルギー)
Bruederle経済相は原発モラトリアムについての発言をとりけした
Bruederle経済相は、彼が産業界の首脳者を前にメルケル政府によってすでに発表された地方選挙でもすでに進められている原子力モラトリアムを根拠とする産業連合をまえにしたメディアへの報告を言い換えた。かれは間違って引用されていると。
1.およそ40の主要産業の経営者の総会にはエネルギーコンツェルンのRWIやEonの首脳もいた。メルケルのモラトリアムの報告でエネルギー多用産業への配慮がない。この分野では存亡の危機にある、との意見あり。
2.メルケル首相は原子力発電所のストレステストの全EUでの実施を支持。
「すべてのEU域内の参加国は域内の原発の安全性に等しく立ち向かう、それゆえこれは我々の勧告書」に基づいている。日本における劇的な災害は「疑いもなく全世界に対する一つの転機である」。
3.DGBの書記長M.Sommerは原発の寿命延長をもとにもどすことを要求。「我々は残りの期間を超過利用することなくただちにrot-gruenen脱原発合意(2000年4月のSPDと緑の党の脱原発についての合意)に戻るべきである」。「首相が形式的な妥協や原子力産業と裏取引することなくいまや透明性をもたらす時である」。
4.ドイツ商工会議所(DIHK)の会頭Hans Heirich Driftmannは唐突な核エネルギーからの脱出について3月24日に警告した。かれは同時に」大規模な送電インフラストラクチャーの建設の受け入れを要求した。7つの発電所の停止はエネルギー供給に著しく影響を与える。結果として電力網の安定性と電力価格にも影響する可能性がある。
5.緑の党の書記長は国会でバイエルン環境相(CSU)とザール州首相の原発停止の延長を評価した。ザール州のMueller首相の提案は決定的な党の話し合いの基礎になりうる、とした。
6.SPDと緑の党は3月24日にドイツの17の原発のうち8つを停止する法案を国会に提出。
7.SPDと緑の党は原発の代わりにエコエネルギーの建設を急ぐことを提案。(CSUとCSD)連合とFDPからなる政府は3ヶ月のモラトリアム明けの後ようやく8つの原子炉のどれを電力網に復帰させてもいいかを決定する。

フランクフルター・アールゲマイネ より
Aktuelle Nachrichten online – FAZ.NET
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フランクフルター・アルゲマイネ・ツァイトゥング(独: Frankfurter Allgemeine Zeitung – F.A.Z.)は、第二次世界大戦後の1949年にフランクフルト・アム・マインに再建されたドイツの新聞。略号は FAZ である。福島原発事故に関連する記事の表題と抄訳を安藤直彦会員が随時行う。 体裁を整え伊津が掲載する。