フランクフルター・アールゲマイネ(FAZ.net)記事抄訳(20)

福島原発事故に関連する記事の表題と抄訳を安藤直彦会員が随時行う。(掲載伊津)

2011年6月7日
(脱原発)
エネルギーコンツェルンは原発停止計画に抵抗している
2022年までの脱原発は政府の決定事項である。しかし原子力コンツェルンはその実行を望んでいない。法的な論争をすると脅している。FDP(自由民主党)にとっては連合(CDU/CSU)が重荷であることは明らかである。
 RWEはGundremmingen Bの原子炉を2017年でなく2021年に停止するよう首相に書簡で要求。また、Vattenfall(スェーデン資本の電力会社、ドイツ国内に原発を所有=訳注)は所有するKruemmelとBrunsbuettlの原子炉の強制停止にたいして「正当な補償」を要求している。

2011年6月9日
(脱原発についてのコメント)
エネルギーカルテット(4電力=注)はまだ役に立つ。
脱原発がやってくる。EonとRWFはその利益目標を10億ユーロ(1100億円)にまで減らすことになる。しかし、同情は的をえていない。エコ電力時代への転換は電力業者にとってチャンスでもある。(Werner Surubeck記者)
連邦政府は異常なテンポでエネルギー転換に関する一連の法律を議会に提出しつつある。このテンポは政治および社会における原発批判の大きな陣営をなだめた。しかし、不平はあちこちである。しかし、最終的には大手電力コンツェルンは政治によって手綱を握られている。
そのような意地悪に対して、脱原発派はあまりにもまじめである。メルケル首相によって、未来の世代にとっては巨大なチャンスと宣伝されているエネルギー変革は、ドイツの国民経済の将来という観点ではまず第一に多くの未知の方程式である。電力供給の確実性、電力網の安定性、エネルギー変革を原因とするコスト上昇およびエネルギーを多用する企業の競争力への影響、これらにはすべて重大なリスクが隠れている。
まず、Eon,RWE,ENBWおよびVattenfallは本当に巨大な敗者なのか。彼等から可能性を取り上げ、収益力を大きく減らす。これらの原発企業は好まれないにちがいない。しかし、電力供給における彼等の役割を理解すべきであらう。ドイツの電力市場は国民経済にとって人体における血液循環と同様不可欠である。
 それは4つの巨大電力メーカーには利益をもたらす。二つの最大電力メーカーは国際的な公共企業として現在みるもあわれな図が示されている。しかし、他人の不幸を喜ぶものが少ないのと同じく同情もすくない。脱原発に結びつく発電所パークの再建は四つの原発企業にとって不可欠である。脱原発と併行してドイツではエコ電力の割合の倍増が必要とみられている。
大規模電力企業は収益が再び安定する望みもある。原子発電所は石炭およびガス発電所によって置き換えなければならないので、その限界コスおよびその卸価格は押し上げられるからである。都市工場(自治体の発電所)の設備がもう一度会社の戻ってきて、より広く供給することになる。しかし、まず、これら四つの巨大電力企業は多くの新しい設備によって利益がでるだろう。確かなことはドイツは好かれていない大規模電力なしではエコ電力時代は決してこないということである。

2011年6月9日
(エネルギー変革に対する政府の説明)
「ヘラクレスの課題」
メルケル首相は国会で2022年までに核エネルギーからの脱出の意思を強調した。ヘラクレスの課題に関わる問題である。「もしも」、や、「しかし」はない。SPD委員長のSteinmeierの「間違った解決」発言にこたえた。フクシマは核エネルギーについての私の姿勢をかえた。核エネルギーのレストリスク(可能な限りの安全策を講じた後にのこされたリスク=訳注)を私はフクシマから得た。なぜなら、高度の安全基準をもつ高い技術をもった国においても人間の判断には踏み込めない、という、確信をもった。

2011年6月9日
(エネルギー変革)
緑の党の連立
首相は連合(CDUとFDP)の支持者の多くを驚かせただけでなく、多数の緑の党の支持者をも驚かせた変革をうちだした。からからの喉で一度ならず何度も野次をいった。
 フクシマの災害は緑の党の政治的なプログラムにも影響した。このアンケートでは緑の党は小さな国民政党に生まれ変わった。Baden-wuerttmberug州ではCDUとSPDを州首相の座を追い落とした。

2011年6月9日
(脱原発への政府説明)
間違った側の賛成
国会において脱原発の審議が始まった。メルケル首相は連合の支持者はほとんど説得できなかったが、反対党の列からはあざけりと愚弄とともに喝采がおきた。

2011年6月11日
(脱原発)
エネルギー供給者は燃料税に反対して準備している
Gundremmingen のあと、Grafenrheinfeldの原発もまもなく新しい燃料棒による電力の生産をおこなう。その際、経営者対課税者の戦いがはじまる。

2011年6月11日
(脱原発)
物理学者(ドイツのメルケル首相)の判断
不平屋に逆らって:メルケル首相のエネルギー変革なしに連立内閣はどこで存立できるのか?物理学者メルケルは彼女の連立内閣と首相の地位を脅かしていた連鎖反応を迅速に把握することで機先を制した。(Georg Paul Hefty)
「福島は核エネルギーに対する彼女の姿勢を一変させた」、とメルケルは木曜日(6月9日)に国会で述べた。彼女は遠く離れた災害を目の当たりにしてそれから学んだ。しかも、現実はパラドックスのようなやり方で次から次へと変わった。
この物理学者は日本からの報告に接して学生時代に得た彼女の知識に光を当てた。それはコントロールが効かない状態に陥った連鎖反応は炉心溶融にまで行き着くということだった。
 CDUのトップと同時に連邦でもある首相は何回も話し、何度も非難されたが、彼女の思考と行動は一人の自然科学者のものである。この資性は彼女の血と肉に行き渡っている。3月12日、13日の週末に彼女の政治的な決定は決まった。おそらく不幸な日本の同僚として彼女はすべての政治的な連鎖反応、それは彼女の個人的な原発災害に行き着いたかもしれないものだったがーを差し止めることに置いた。詳しくは、もし首相が3月14日の午後にモラトリアム(寿命延長の3ヶ月停止)を発表せず原発の寿命延長を中止しなかったとしたら、何が起きていたか。
(訳者注:連立内閣の崩壊という連鎖反応を物理学者である首相がいち早く察知し脱原発という手をうつことによって食い止めたというストーリー?)

2011年6月13日
(脱原発)
残余電力量*と所有権の要求
電力コンツェルンは、要求されている原子力発電所の2022年までの停止により、保証された電力量の枠を使い果たすことはできないので訴訟を考えている。数千億円の要求の機会は全く見込みがないわけでもないとして価値がある。
注:Reststrommenge:それぞれの原子炉はあとどれだけ発電しても良いか、と言う量がきめられており、2000年1月にすべての原子炉の合計で2623テラワット時、発電してもよいことになっていた。
 「脱原発は一つのヘラクレスの課題*である」と首相、環境相,Roettgenはいう。
*ギリシャ神話のヘラクレスはアポロンの神託によるネメアのライオン退治など12の難題をこなす
費用は制御可能である。それはわが国土の利用の為の投資費用といいうる。それについては補償のための費用に算入される。エネルギーコンツェルンは国家による裁判で補償を戦い取るつもりである。そのさい、関係するコンツェルンの成功の見込みがどのくらいの大きさかは問題である。

2011年6月16日
(国家コンツェルンAreba社)
フランスは原子力のトップ、Laubergeon を解任
フランスで最も力のある原子力担当マネジャーAnne Lauvergeonは世界最大の原子力コンツェルンAreva社のトップの座を失った。Lauvegeonは日本の災害の前すでに圧力を受けていた。

フランクフルター・アールゲマイネ より
Aktuelle Nachrichten online – FAZ.NET
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フランクフルター・アルゲマイネ・ツァイトゥング(独: Frankfurter Allgemeine Zeitung – F.A.Z.)は、第二次世界大戦後の1949年にフランクフルト・アム・マインに再建されたドイツの新聞。略号は FAZ である。福島原発事故に関連する記事の表題と抄訳を安藤直彦会員が随時行う。 体裁を整え伊津が掲載する。