エントロピー学会の会費について

当学会の会費について、設立趣意書には「形式ばった組織・硬直した運営を避け、インフォーマルな学問交流の場とする。会員は登録されるが、当分の間会費は定めない。運営に必要な資金は、すべて会員の任意の寄付によるものとする。」と謳っております。

エントロピー学会のweb siteには、上記設立趣意書の次に、組織運営の基本的原則が列記されておりますが、会費について次のような記述があります。
「会員には年会費を支払っていただきますが、定款がありませんから、会費の額を決めることができません。この学会を維持していくためには経費が必要で、その額は会員一人あたりおよそ年間5000円程度です。この金額を目安に会費をお支払いいただいております。もちろんこれより多くても少なくても、会費を支払っていただければそれでいいのです。」。

設立当時の私たちは、学問のあり方や、学会や大学のあり方に、根源的な問題意識を持っていたため、既存の全ての価値観に対し別のあり方を探し求めようとしておりました。オルタナティブという言葉が1980年代の時代の精神でもありました。会員を律する定款を定めなかったのも、そのような時代背景がありました。

誰も他人や組織に強制されるのではなく、自由で自覚的な個人の自発的な意志によってこの学会が運営されるのが良いと、その当時は考えておりました。また私たちがたどり着いた新しい考え方を、多くの人たちに伝えて行くには、最初にそのことに気付いた者が率先して、多くの人たちに情報を伝えていかねばならない、という想いもありました。
さらには、私たちは当時の公害や環境破壊によって被害を受けている社会的弱者と同じ立場に立って学問を進めていかねばならない、という想いもありました。
そのような想いから、会費の額は、あくまでもそれぞれの会員の財政状況や、学会への想いの深さなどから、自発的に任意に決める、という原則で運営して参りました。

私はこの自由な個人による自発的な精神によって新しい学問が始まるであろうとした設立当時の考え方が、間違っていたとは、今でも考えておりません。しかし、時代が移り、80年代の改革への熱い思いも今や過去のものとなり、この組織運営の原則はもはや時代の精神にあわなくなってきてしまったことを、残念ながら認めざるを得ないと考えております。会員の「真面目な人が不真面目な人の負担を負うということが理解できません」という考え方は、現在の当学会の中で多くの人たちが共有していると思います。

発足以来27年の歳月を積み上げてきました当学会は、財政問題だけではなく、いくつかの深刻な問題に直面し、存亡の危機に瀕しております。この苦難の季節を乗り越えていくために、理想主義的な組織原則を捨てて、ごく当たり前の普通の組織の運営原則に切り替え、退会措置を含む定款を定め、厳密な会費制に切り替えていかざるを得ない、と考えております。私たちは、27年前に定めた組織原則を総点検し、新たな組織として再出発するため、真剣な議論を始めております。

2010年5月6日
事務局担当世話人
藤田祐幸